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手術治療

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白内障手術

 白内障はカメラのレンズと同じ機能を持ったピント合わせをする組織(水晶体)が濁る病気です。手術では、水晶体の濁りを取って眼内レンズを挿入します。手術時間は、5分~10分程度ですが、白内障が進行して濁りが硬くなっている時や手術時に散瞳(ひとみの開き)が悪い場合は時間がかかるようになります。手術をする前に術前検査と手術の説明を受ける必要がありますので、実際に手術を受けられるのは受診して2~3週間後になります。手術は両眼同時には行わないため、片眼を手術したら2日~1週間後ぐらい間隔を空けて他眼の手術を行います。

 手術では、できるだけ患者様の要望に沿うようにピント合わせ行います。保険で入れられる眼内レンズは単焦点レンズになりますので、遠くにピントを合わせると近くが見にくくなり、逆に近くにピントを合わせると遠くが見にくくなります。但し、ピントが合いにくいところは眼鏡による矯正を行えば見えるようになります。

 乱視の強い患者様には、乱視矯正用眼内レンズを使用していますが、矯正しきれないで残った乱視には眼鏡による矯正が必要です。

​ 当院では選定療養による多焦点眼内レンズを使用した白内障手術も行っております。選定療養による手術では、通常の単焦点レンズと多焦点レンズの価格の差額分が自己負担となりますが、治療に関する費用は従来通りの保険診療での取り扱いとなります。

 手術後1週間は、目を不潔にすると感染症を起こして重篤な視力障害を引き起こすことがありますので、手術を受けた後は1週間程度屋外での作業を差し控えて頂く必要があります。手術時に使った散瞳薬の影響で術後1週間程度はひとみが開いた状態になりピントが合いにくい状態になりますが、その後は見え方が安定してきます。

緑内障手術

 緑内障は目の中のお水(房水)の出口である隅角(虹彩と角膜との隙間)の開き具合によって大きく2つに分類されます。すなわち、隅角が広い開放隅角緑内障と隅角が狭い閉塞隅角緑内障に分けられます。

1.開放隅角緑内障

 開放隅角緑内障の治療では、眼圧をコントロールすることによって進行を抑えることが大切になります。点眼治療によって十分な眼圧下降が得られない場合にはレーザー治療(隅角光凝固術)や緑内障手術が必要になることがあります。

 レーザー治療は通常3~5分程度で終わる治療で点眼麻酔だけで施行できます。この治療は侵襲が少なく、簡便な方法なので患者さんに対する負担は少ないですが、手術に比べて眼圧下降効果が弱くなります。

 緑内障手術には様々な手技がありますが、一番一般的なのが線維柱帯切除術です。この手術では、通常注射による局所麻酔が必要で、手術時間も30分程度必要になります。眼圧の下降効果は強めですが、眼圧が下がり過ぎると合併症が起こり易くなります。最近では術後に眼圧が下がり過ぎないようにアルコン社製のエクスプレスを使用した緑内障インプラント手術を行うことが多くなっています。エクスプレスを使用した目では、一定の流量で眼内のお水が外に抜けるようになるため従来の手術に比べて急激な眼圧下降が起こりにくく、合併症が少なくなっています。

 緑内障の手術後は眼圧が安定してくるまでは頻繁に診察が必要で、通常術後1~2週間は2日か3日毎に受診してもらう必要があります。緑内障手術では術後の管理が大切で、手術後に眼圧が再上昇した場合は、お水の流量を調整している糸をレーザーで切ったり、患者様に眼球をマッサージしてもらう必要があります。更に手術の傷が癒着して眼圧が下がらなくなる場合には癒着を剥がず処置が必要になります。

 緑内障がある白内障患者様を対象に白内障手術時にiStentと呼ばれるステントを隅角の線維柱帯に挿入する治療も行っています。この治療は、合併症が少なく、通常の白内障手術と同じ受診頻度で治療が可能です。

2.閉塞隅角緑内障

 開放隅角緑内障と比べて頻度は少ないですが、閉塞隅角緑内障では隅角が閉塞して急激に眼圧が上がると短期間に失明することがあります。このような緑内障発作は、もともと遠視が強くて、眼球の大きさが小さい高齢女性に起こり易く、狭隅角で緑内障の発作を起こす可能性が高い患者様には、発作予防のために瞳孔を縮める点眼薬を投与するか、虹彩に穴を開けるレーザー治療を行ったりします。白内障がある場合には、白内障手術を早めに行って隅角を広げる治療も選択肢になります。

硝子体手術

 20年前ぐらいの硝子体手術は通常入院で行うことが多かったですが、最近では手術の切開が非常に小さくなり、合併症も少なくなったため、日帰りで手術を行う施設が多くなっています。当院での硝子体手術は25ゲージ無縫合硝子体手術で、手術に使われる器具は注射針と同じくらいの太さ(0.5mm)で行うことが可能です。小さな切開のため手術による侵襲は非常に少なく、以前の手術に比べ日常生活あるいは社会生活へ早期に復帰できるようになりました。

 硝子体手術には熟練した技術が必要になりますが、当院では硝子体手術に豊富な経験を持つ栗原 勇大医師をお迎えし、治療を担当して頂いております。

 硝子体手術の適応になるのは、目の中の硝子体が濁っている場合(硝子体出血や硝子体混濁)、網膜の一番大切な場所(黄斑部)に穴が開いている場合(黄斑円孔)、網膜に膜が付着し視力に影響がある場合(黄斑前膜症、増殖糖尿病網膜症など)、黄斑部に浮腫(むくみ)があって視力が落ちている場合(糖尿病黄斑症、網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫)などです。

 手術は局所麻酔下で行い、どのような病気でも手術は通常20分~30分程度で終わります。手術日土曜日で、月1回行っています。術後の診察は、翌日の日曜日と火曜日になり、その後は1週間後の診察になりますが、手術時に眼球に空気を充填した患者様はその間に1回程度追加で診察が必要になります。

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平成18年7月19日~令和6年1月31日までの集計

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多焦点眼内レンズとは?

 従来の眼内レンズは単焦点眼内レンズであったため遠くにピントを合わせると近くのものが見づらく、逆に近くにピントを合わせると遠くが見にくくなりました。このため、遠くにピントが合えば近く用の老眼鏡を、近くにピントが合えば遠く用の眼鏡を装用する必要がありました。

 多焦点眼内レンズとは、このようなわずらわしさをなくすために開発されたレンズで、光学的に遠くと近くの両方にピントが合うため、近くも遠くも眼鏡なしで焦点を合わせられます

 多焦点眼内レンズの種類には、屈折型、回折型、焦点拡張型(EDOF)の3種類があり、現在主に用いられているレンズは、回折型と焦点拡張型になります。

 以前使われていた回折型レンズは遠方と近方に焦点を合わせる2焦点タイプのレンズが主で、中間距離が見えづらく、物が薄く見えたり(コントラスト感度低下)、夜間光の回りににじみ(グレア)や輪っか(ハロー)が見える欠点がありました。

 我が国では、2017年に従来の回折型レンズに比べて遠方から中間距離まで連続的に自然に見える焦点拡張型の多焦点眼内レンズ(AMO社製シンフォニー)が発売されました。このレンズは、コントラスト感度の低下が少なく、グレアやハローも軽減され、デスクワーク中心のお仕事や夜間運転の頻度が高い方にも適しています。但し、このレンズでは近方視の見え方がやや弱いため読書や趣味などで近方をハッキリ見たいときには軽い老眼鏡が必要になることがあります。

 2019年には3焦点タイプの回折型レンズ(Alcon社製パンオプティクス)が発売され、遠方から近方まで連続的にピント合わせができるようになりました。回折型多焦点眼内レンズは焦点拡張型のシンフォニーに比べ近見時の見え方が改善していますが、光の振り分けによってwaxy vision(モワッとした見え方)を自覚することがあり、どうしてもこの見え方に慣れない場合もあります。

 2021年は焦点拡張型と回折型の両方の性質を掛け合わせた多焦点眼内レンズ(AMO社製シナジー)も発売されています。このレンズも3焦点タイプの回折型レンズと同様に遠方から近方まで連続的にピント合わせができるようになっているレンズです。

 これらのレンズは、メガネなしで生活できることを目標に作られたレンズですが、術後に全員が眼鏡不要になるわけでは無く、日常生活で何らかの矯正が必要になることもあります。特に術前より乱視が強い方は乱視が残ることがあり、術後約3割程度の方が日常生活で眼鏡による矯正が必要になると報告されています。

眼瞼下垂手術

 加齢によって眼瞼を上げる筋肉(眼瞼挙筋)の力が落ちて目の開きが悪くなることがあります。眼瞼下垂が酷くなると上方の視界が狭くなり、瞳孔にまで下垂が及ぶと視力も低下します。このような患者様には眼瞼挙筋の力を補強するような手術(眼瞼挙筋短縮術)を行っております。当院では眼瞼の皮膚に切開を入れずに眼瞼の裏側の結膜に切開を入れて手術を行うため術後に傷跡は残りません。

 眼瞼挙筋の力があっても眼瞼の皮膚がたるんで通常の眼瞼下垂と同じような症状を呈する患者様がいらっしゃいます。このような患者様には眼瞼の皮膚を切除する手術を行っています。この手術の場合は眼瞼の皮膚を縫合しますので1週間後に抜糸が必要になります。

 眼瞼の手術をすると眼瞼の腫れが引いてくるのに1週間程度かかります。また、眼瞼は出血が出やすい部位なので皮下出血がしばらく残りますが、時間の経過とともにきれいに消えます。

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